どうも。
マガジンで一番すきな漫画はベイビーステップだった管理人です。
『だった』と過去形なのは、別にベイビーステップが完結したからではなく、あの終わり方のせいで、漫画の評価が下がったせいです。

いくらなんでも、あの終わり方はないでしょうよ。
「いよいよプロ編が本格的に始まる――」とワクワクした矢先に終了ですからね。
がっかりにもほどがある。

実際、ツイッターや他のサイトでも『あれはひどい』という酷評の嵐でした。

…………ただ、連載が終了してから、約3週間が経ち、改めてベイビーステップについて考えてみました。
すると、ベイビーステップの終わり方は読者に誠実とは言えないまでも『物語としては、しっかりと完結したのではないか』と思うようになりました。
少なくとも、世間で言われるような『打ち切り』とか、『作者が続きを思いつかなくなった/描けなくなった』では無い、と考えるようになりました。

そこで今回この記事では、ベイビーステップがなぜあのような終わり方をしたのか?
さらに、続編や第二部がありえるのかということについて、考察していこうと思います。





最終回への誤解


まず始めに、たまに見られるひどい誤解を改めたいと思います。

誤解というのは最後のシーン『タイム!』についてです。



(C)勝木光(最終回 最後のページ)


これ、普段ベイビーステップを読まない人からすると
「ああ、文字通り『タイム』で物語を中断したんだな」
「タイム、が作者の心境なんだな」
「とりあえず一旦休んで、それから再開するんだな」

って思うかもしれませんけど、全くの逆です。

ベイビーステップの世界で審判が『タイム!』というと、『時間になりました、プレーを再開してください!』の意味です。
私は普段テニスの試合を見ませんし、現実でどうかは知りませんが、少なくともベイビーステップの中では、そのような意味で使われてます。
(多分、『ノータイム!』(タイムを終了します)のコールの『ノー』を省略してるんだと思います)

実際、最後のコマを見てください。
エーちゃんと、対戦相手のファウラーがベンチから立ち上がり、コートに向かって歩いてますよね?
このコマのメッセージは『休む』という意味よりも、『新しい戦いに向かって動き出す』という意味合いが強いんです。

勿論、単純に『連載がタイム!』の意味である可能性も完全には否定できませんが、これまで数百話と使ってきた意味を、最後の最後でひっくり返す方が不自然です。
最後のコマの『タイム!』の意味は、『新しい戦い、展開が始まる!』という意味なんです。



終わり方への考察――エーちゃんの少年時代の終わり


ここまで、ベイビーステップの最終回の最後のコマは『物語の中断』ではなく、『物語としての新展開を暗示している』という話をしました。

ところで私は最初に、『ベイビーステップは物語としては、しっかりと完結した』といいました。
その理由は、『エーちゃんの少年時代は、あの瞬間に終了した』と考えるようになったからです。

順をおって説明します。



マガジンは少年を描く雑誌


まず始めに、少年マガジンは『少年漫画』です。
つまり、少年を主人公とし、少年の成長を描く漫画雑誌です。
となると、掲載されているベイビーステップは、少年の成長を描かなければいけません。

当然ですが、エーちゃんは連載当初、少年でした。
連載開始時のエーちゃんは高校1年生。
入学して2週間のまごうことなき少年です。


(C)勝木光(ベイビーステップ1巻 最初のページ)


対して、最終回を迎えた時、エーちゃんは19~20歳。
もう、少年とは言えない年齢です。
プロ入りも果たし、高校も卒業したたエーちゃんのこれからの戦いは、”大人”としての戦いなんです。



勿論、年齢だけを根拠にするのは乱暴です。
別に大人が主人公の少年漫画なんて腐るほどあります。
例えば、『ぬ~べ~』とか『るろうに剣心』なんて、最初っから20代ですからね。

最初は主人公が子供でも、後に成長するパターンも沢山あります。
『NARUTO』とかが有名です。

でもこれらの作品は、年齢こそ上がっているものの、精神的に成長したと言える作品は少ないです。
一言で言えば、『年齢が上がっただけで、大人になったとはいえない』作品ばかりなのです。

一方、エーちゃんは違います。
エーちゃんは明確に、『ベイビーステップ』という作品の中で、『子供から大人』に成長していき、最終回付近では、完全に大人へと成長しきったのです。
ベイビーステップは、決して打ち切りになったわけでも、作者が急に描かなくなったわけでもありません。
エーちゃんが、成長しきって、これ以上描くことがなくなったから、終わったのです。


では、次の項で、『大人になるとはどういうことか』について、考えてみます。


どこまでが子供で、どこからが大人なのか


『大人になる』とはどういうことでしょうか?
ちょっと、考えてみてください。


……働いて、お金を稼ぐようになることでしょうか?
「子供の頃はよかったなぁ」と思い返すようになることでしょうか?
それとも、単純に20歳になって、成人になることでしょうか?

……どれも違います。
私が思うに、『大人になる』の定義とは


『自分自身の主体性を持ち
他者との関係性を良好にした上で
自らの技術、存在価値を高めていく
……そんな存在になること』


を指します。


抽象的すぎて、何言ってるんだかわからないですよね?
実は、これには元ネタがあります。

これはアメリカの作家、経営コンサルタントである、スティーブン・リチャーズ・コヴィーが提唱した7つの習慣をもとにしたものです。
コヴィー博士は、人間は『ある7つの習慣』を身につけることで、『人生が成功する』と提唱しています。
順番に紹介しましょう。

(私なりの独自の解釈を含みます。
ご注意ください)


ステップ1,主体的な行動をとる


まず一つ目は『主体的であれ』ということです。
主体的というのは、自分自身の望みを理解し、自分が望ましい方向に進んでいくことです。
同時に、『周りの状況に流されない』という意味も含みます。


例えば、多くの人は雨が降ったら、嫌な気持ちになりますよね?
学校や会社にいきたくないと考える人も多いんじゃないでしょうか。
しかし、主体的な人間は雨がふろうが槍がふろうが『それはともかく、俺は学校で理科を勉強したいから学校に行くぞ』と言える人間なんです。

「そんなやついねーよw」って思ったかもしれませんね。
じゃあ、これを学校じゃなくて部活とか、ゲームに置き換えてみればどうでしょうか?
何か面倒なことがおこっても、自分が本当にやりたいことなら、前向きに取り組めますよね?

そうなんです。私達が学校なり会社に行くのは、多くの場合、『自分が行きたいから』ではありません。
『親や社会(常識)に従って』我々は学校や会社に行くんです。
これは駄目です。主体性がありません。

ベイビーステップで見てみましょう。
エーちゃんも最初は、社会の空気と親の教育方針に従い、学校の勉強に励んでいました。
(因みに、言われたことを進んでやることは主体性があるとはいいません。自主的である、といいます)
しかしある時、なっちゃんに出会い、テニスと出会います。

そして彼は、『テニスでプロになりたい』『親の反対されるし、自分の実力は低い……状況は厳しいけど、プロになりたい!』と決意するのです。



ステップ2、ゴールから考えよ


主体的に考えられるようになったら、次に必要なのは『ゴールから考える』ことです。
言い方を変えるなら、成功のイメージをもって、人生に望め、ということです。

エーちゃんはプロになる!と決意した後、親を説得するために、2年間だけ!と期間を決め、目標の大会から逆算して、トレーニング内容を決めました。
これが大切なんです。
私たちはともすれば、何か目標をもっても、「どうやればいいかわかんないし、とりあえずやれることやろう!」となってしまいがちです。
しかしこれでは、いつまでたっても目標にはたどりつきません。
目標を達成するために何をすればいいか、分かってないからです。

例えば、あなたが得意なゲームを、人に教えるとしましょう。
初心者は色んな技を使いたがったり、色んなキャラを使いたがったりするでしょう。
しかし、既にそのゲームが得意なあなたは「強くなりたいならとりあえず、このキャラを選ぼう。んで、とりあえずこの技、コンボだけ覚えればなんとかなるよ」といえますよね?
この、ゴールの光景が見えているのが、すごく大切なんです。
何事も、ゴールから考えられればうまくいくのです。


ステップ3、優先順位を決めよ


主体性をもって、ゴールを考えられるようになっても、まだ足りません。
このままだと、無限大に、色んなゴールが見えてしまうからです。
例えば私は、昔、カードゲームのプロになりたかったです。
同時に、囲碁のプロにもなりたかったし、予備校の先生にもなりたかったです。
物理の研究もしたいし、格ゲーのプロも魅力的でした。

……これ、同時にやるのって、基本ムリですよね。
人間、なにか一つでもモノにするのは、けっこう大変です。

ゴールを考えられたとしても、その中で特に、自分にとって大切なもの、大切なことにだけ、時間を割いていくべきなんです。

エーちゃんで言えば、途中から学校の勉強は殆どしなくなりましたよね?
エーちゃんが一番つらかった時期は、『学校の勉強の時間はこれ以上減らせないし、睡眠時間も削れない。こんな中で、これ以上どうやってトレーニングすれば……』と悩んでいた時だとおもいます。

この状態から脱出し、テニス一本に絞れた時、彼は次のステップへと進んだのです。


ステップ4,Win-Winを意識する


ここまで、主体性を持ち、目標から考え、優先順位を決めることが出来るようになりました。
正直、一人の人間としては、この時点でほとんど完成です。
自分のやりたいことを、効率的にできる状態です。

ただ、ここから先は、社会でどう、生きていくかという状態です。
人間は社会的な動物ですから、社会で生きていく能力が必要です。

その第一歩が、Win-Win……自分も相手も得をする、という意識です。
これは、テニスで引き分けを狙いましょ、という話ではありません。
自分と他人、両方にメリットのある行動を心がけろ、ということです。

例えばエーちゃんで言えば、練習試合は、自分のためだけでなく、相手にもメリットのある状態でないといけません。
そうじゃないと、誰も練習試合に付き合ってくれなくなります。
なっちゃんと付き合うなら、お互いがお互いを励ましあい、お互いに相手といて楽しい、という状態でなければなりません。


ステップ5,相互理解を進める


そして、Win-Winを実行するために必要なのが、相手を理解し、自分を理解してもらうということです。
相手にとっての得とは何かを理解しないと、相手のために動くことはできません。
同時に、自分という存在を相手に理解してもらわないと、自分が気持ちよく、相手と付き合うことができまえん。

ベイビーステップで言うと、終盤エーちゃんは、自分のチーム、スタッフを手に入れましたよね?
あの状態が正に、相互理解をすすめ、Win-Winを作った状態です。

エーちゃんからすれば、自分が世界で戦うためにサポートしてもらえる。
スタッフからすれば、エーちゃんのデータをもとに、自分の仕事が捗る(あと、お金も貰える)

一方が甘い汁を吸うわけでなく、お互いが満足行く状態が大切です。


ステップ6,シナジーを形成する


そして、最も理想的なWin-Winとは、お互いが一緒にいて満足……という状態を超え、お互いが一緒にいると、一人でいるより何倍ものパワーを発揮する状態を作ることです。
1+1が2ではなく、3や4,いや、10や20,100や1000になれば理想的です。

エーちゃんは、そんな状態を手に入れました。

まず、エーちゃんのスタッフは、どれも一人のプロとして優秀で、エーちゃんが一人でデータ分析する時の、何倍もの効率で、相手を攻略することが可能になりました。
また、テニス以外に、プライベートな面でも、なっちゃんと結ばれ、非常にいい状態を作ることが出来ました。




なっちゃん自身、テニスプレイヤーですし、メンタル的にも、技術的にもお互いに励ましあい世界で戦うために助け合うことが出来るでしょう。

まさにエーちゃんは、人として、理想的な土台を手に入れることができたのです。



ステップ7,自分を磨く


ここまで、主体性を持ち、ゴールから考え、優先順位を意識し、
Win-Winのために、相互理解をすすめ、1+1を100にも1000にもしていくことが理想と話しました。

ここまでくれば、もう大きくやることは変わりません。
あとは、この状態をさらに良くしていくために、自分の技術を高めていくだけです。
練習するだけです。
経験を積むだけです。

いわば、『大きな変化』はなくなるのです。


そう考えると、ベイビーステップが終わった理由も見えてきませんか?

正直、終盤のベイビーステップは、若干のマンネリがありました。
エーちゃんのプレイスタイルは、クリシュナを倒したことでほぼ完成しました。
『死ぬつもりでやる』を覚えたエーちゃんは、もう精神的には完成しています。
あとは、できることを増やしていくだけです。

それって、もう、同じことの繰り返しで、わざわざ見なくてもいいことなんですよ。


ここから待ってるのは、ひたすら地味に相手を分析し、倒す計画を立て、そのために技術を手に入れるだけの戦いの日々です。
今までの、新しい精神的な技術を手に入れていた状態とは『違う展開』です。

そうです。今までとは違う『新展開』へ、エーちゃんは旅立ったのです。



(C)勝木光


続編や2期はあるのか?の考察


ここまで、ベイビーステップがなぜ終わったのかの理由を考察してきました。

一言で言うと、『子供としての成長』を描ききったから、ベイビーステップは終わったのです。

勿論、難波江との決着が付いてなかったり、急な終わり方だったりして、読者は混乱しました。
その点は、もうちょっと上手くやれたんじゃないの?と勝木先生を責めたい気持ちでいっぱいです。

でも、少なくとも物語としては、描くことはもう、描き終えているんです。


その上で、二期があるのかと言えば『ありえる』と思います。
なぜなら、エーちゃんにはまだ『大人としての戦い』が残っているからです。

『大人としての戦い』というのは、ある意味ルーチンワークのようなものです。
『課題』や『仕事』があらわれ、それを自分の能力でどんどん解決していく、というものです。
ビジネスジャンプなど、大人向けの漫画では、よくある展開です。

そういった大人の戦いを、青年誌、大人向けの雑誌で勝木先生が描く可能性は、0じゃないと思います。


可能異性は低い


ただ、個人的には、ベイビーステップの続編が出る可能性は低いかな、と思っています。
というのも、勝木光先生の作家性を考えると、勝木先生には少年漫画があってると思うからです。

勝木先生は物語を描く時、先の展開を一切考えずに、物語を描くことで有名です。
例えば、エーちゃんがピンチになった時、普通の漫画なら先の展開のために、多少無理してでも、エーちゃんを勝たせます。
勝たせないと、その先に描きたい展開がかけないからです。

でも、勝木先生は違います。どう考えてもエーちゃんが勝てない時は、潔く、エーちゃんを負かします。
実際それで一度、エーちゃんがプロを諦めかけたときもありました。

このように勝木先生の作風は、この先がどうなるか、確かなことは作者にもわからない、そんなライブ感が魅力の一つです。

となると、そんなハラハラドキドキする作風は、少年漫画で、少年の成長を描くときにこそ、真価を発揮すると思います。
私としては勝木先生にはゆっくり休んでいただき、また何か、新しい作品を描いてくれればと思っています。



まとめ


ということで、私なりに、ベイビーステップの最終回について考えてみました。

あの唐突とも言える終わり方は、たしかに、一つの作品としてベストとは言えないかもしれません。
しかし、あそこからダラダラと同じことを繰り返すよりは、エーちゃんが成長しきった今で終わらせることはベターな選択だったと思います。

少年漫画とは、少年が成長する物語を描くことです。
エーちゃんは、間違いなく、少年から大人へと成長を果たしました。
それこそ、ただ歳をくった30代、40代の人間よりも、よっぽど大人になったと、私は思います。


ここまで読んでいただき、お疲れ様でした。
できればまた、勝木光先生の違う作品の感想記事で、お会いしましょう。
ありがとうございました。






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