どうも、ロイドです。
今回は、映画『竜とそばかすの姫』を朝イチで見てきましたので、その感想を語っていきます。
一言で言うと、『とんでもなく面白い作品』でした。
僕、細田守監督の作品は、『サマーウォーズ』と『おおかみこどもの雨と雪』が好きなんですが、最大風速では、この2つの作品を超えました。
映像の迫力、音楽と物語の融合が素晴らしい映画でした。
以下、詳しい感想を語ります。
(ファスト映画のように詳しいあらすじは書きませんが、本編のネタバレが多数含まれます。
まだ見てない方はご注意ください。)
動画で見たい方はこちら。
まず、出だしから”U”の世界の映像が凄かったですね。
細田守監督の電子世界の表現って、ほんと素敵ですよね。
『僕らのウォーゲーム』(デジモン)や『サマーウォーズ』時代から非凡だと思ってましたけど、さらにパワーアップしてました。
で、そこで出てくるベルと、例の主題歌。
初っ端から歌の力凄くて、一気に作品の世界に引き込まれました。
基本的に映画というものは、序盤で見せたイメージ、要素が作品の根幹をなすわけですけど、
最初っからこんなにパワーのある歌を見せられて、『序盤でコレなら、終盤はどんな歌が来ちゃうの!?』って、否が応でも期待が膨らみます。
てか、ベルがクジラに乗ってるわけですけど、ほんとにこの監督、クジラ好きだなw
バケモノの子で無理やり出したときよりは自然……か?
その後の、主人公スズの過去パートは、『細田守楽しそうだな~』って目で見てました。
いや、ストーリーとしては母親死んでるし、主人公が悲惨な目にあってるしで、何一つ笑うところではないんですけど、僕としては『これが細田守の味だよなー』って感じでした。
あくまで僕の主観ですけど、細田守監督の最大の特徴の一つって、『登場するキャラクターのネガティブな表情』だと思うんですよ。
僕が最初に見た監督の映画が『デジモンアドベンチャー』(1999公開。ぼくらのウォーゲームの前)なんですけど、この時点で主人公たちの泣き顔が、今までのデジモンにはない味ですし、
その後のワンピースをやっても、
時をかける少女やサマーウォーズをやっても、
バケモノの子とか未来のミライとかオリジナルをやっても、
とにかくこの人、主人公を泣かせたり、苦しませたり、慌てさせる表情が凄い個性的で印象に残ると思うんですよね。
そういう意味では、今回のすずのネガティブっぷりは凄かった。
泣き顔はもちろん、『ばれちゃったらどうしよう~』って慌て悶たり(かわいかった)、ゲロ吐かせたりと、『相変わらずこの監督、マジ自分のキャラに容赦ないな』と思ってしまいました。
表情で言うと、後半になりますが、忍くんにスズが正体がバレた時に(でしたよね?タイミングとして)、目元を髪で隠した絶望感のある表情が凄く良かったです。
『目を見せないことで、逆にここまで絶望感を出せるのか!』と唸ってしまいました。
で、そのあとクリオネっぽい天使に出会って、アンチに叩かれつつも、フォロワーがバク伸びしてるところが、凄いリアルでしたね。
ヒロちゃん(眼鏡の友達)も言ってましたけど、『肯定しかされないやつなんて、コアなファンだけな証拠』って言葉が、ほんとにそのとおりだと思って、こういうことをさらりと言える監督って、大ヒットした監督だけだと思うんで、そのあたり、細田守監督の考えが垣間見えて面白かったです。
因みに、この天使の正体については、考察した記事があります。
正体が気になった人はどうぞ
で、順風満帆にアイドルとしての道を進むベルの前に、いよいよ竜が現れるわけですけど、このあたりのバトルは、ちょっとデジモンのオメガモン感があって面白かったです。
で、ここから竜を探す展開になっていくんですけど……このあたりの論理性については、ちょっと難ありと僕は感じました。
大きく分けると、次の3つが気になりまして……
1,なぜ竜の正体をスズたちが探すのかわからない。
→スズの表情とかを読むなら、スズは竜に恋してると言っていいと思うんですが……
そうではなく、変な理屈(ヒロちゃんがなんか言ってたけど、ようわからんかった)だけで正体を探ろうとしているので、感情移入が出来ませんでした。
せめてスズが「なんかわかんないけど、気になるの」って言った上で、
ひろちゃん「そっか!私も、これ以上ライブをめちゃくちゃにされるわけにも行かないし、Uの平和のためにも、あいつの正体を探そう!」
ぐらいの流れならすんなり入ったんですけどね。
映画の流れだと、すずが主体的に動く理由がよくわからなくてモヤモヤしました。
2,竜の正体をなぜ有名人から探すのか
→ひろちゃん、君、冒頭で「まさかこんなど田舎に、ベルの正体がいるなんて思わない」っていってたじゃん!
なぜ、『そういう事がネットではある』とわかっているのに、竜の正体を有名人からだけ探そうとするのか。
3,敵が余りにしょぼすぎる
→そもそも論になるんですけど、今回の映画の最大の敵の一つであるジャスティス集団が、あまりにしょぼすぎるんですよね。
『ルール』という害悪さを表す敵なわけですが……いくらなんでも、やってることが下衆すぎて、自己矛盾しているというか。
『ルールや正義』を相手にしていると言うより、『ただのチンピラ』を相手にしている気分になっちゃって、敵が弱く見えてしまいます。
敵(アンチテーゼ)が弱いと、結果的にそれと敵対している竜やすずもしょぼく見えてしまうし、こいつらを倒した時のカタルシスも薄くなってしまうので、ちょっと敵が力不足だなぁ、という印象です。
(鬼滅の刃の無惨様とか、呪術廻戦の真人とか、敵がクズで強いほど倒す時にテンション上がる)
この映画、本当に面白いので、このあたりの論理がいまいちなのが、少しもったいないな、と感じました。
実際、友人はこの部分が気になって楽しめなかったみたいです。
(かなり批判的な内容なので、閲覧注意)
で、こっからはディズニーよろしくの美女と野獣パートです。
ここですねぇ、ほんと良かったですね。
僕、映画の内容を音楽の歌詞で表現するのが大好きでして、近年だと、一番成功した映画が『前前前世』の君の名は。だと思うんですけど、あれに匹敵する勢いで、音楽と内容を絡めてきましたよね。
このシーンは歌詞も素晴らしくて
『一人にしてほしいと あなたは言い放つけど
ホントは胸の中にあるもの 覗かれたくないのでしょう』(うろ覚え)
から始まって、二人の距離が縮んでいくところとか、凄く良かったです。
サビの『けどあなたを、どんなあなたでも、見たいと考えてしまう』(うろ覚え)とか最高よ。
で、いよいよ山場のコンサートシーンに入るわけですが、この時に、周りの大人達が、『実はスズ=ベルに気づいていた』ってのがエモくてよかったです。
”U”のアバターは、あくまで本人の潜在能力を引き出している【だけ】ということで、引っ込み思案なスズの力を、周りの人は皆見抜いてたんですね。
この大人たちの存在は映画としてもかなりおしゃれで、『サマーウォーズ』時代より演出がうまいな、と僕は感じました。
サマーウォーズも『周りの大人の力を借りて』主人公が頑張る映画ですが、いかんせん、数が多すぎた。
今回の大人は5人と顔も覚えやすいですし、過去のアメリカ(だっけ?)で、中学2年生の年下との初恋の話をすることで、暗に『竜=年下の少年』と暗示するところとか、オシャレで良かったです。
そして、歌い始める『はなればなれの君へ』(会ーいたいーの奴)が最高でした。
この映画って、『歌の説得力』が半端ないですよね。
そもそもの設定として、ベルは『新世界の歌姫』というキャラなわけですが、その歌が下手だったり、イマイチだったら、映画そのものが壊れてたと思うんですよ。
でも、最初に流れた”U”や”歌よ”、竜へのラブソングや、最後の『はなればなれの君へ』がどれもクオリティが凄まじく高くて、半端ないな!と思いました。
(ってゆーか、今声優調べたら、主人公のすずは中村佳穂さんでシンガーソングライターだし、
ひろちゃんなんて幾田りら(YOASOBI)じゃねーか!!
僕、あんまり先入観もちたくないんで、声優は調べないで映画見るんですけど……映画の説得力も納得だわ!
てか、幾田りら上手すぎだろ!)
で、自らの顔を晒して歌を歌えるようになったという、最高にエモいシーンが終わって、いよいよクライマックスに向かうわけですが、ここの竜の見つけ方も最高でした。
今までも細田守監督の作品では『多数の中から敵を見つけ出す』展開がいっぱいあったわけですが、その解決方法が、今までとは一線を画するんですよね。
例えば、デジモン『ぼくらのウォーゲーム』では、世界中の人の『メール』(応援する気持ち)が、決着の決め手になりました。
『サマーウォーズ』では、こいこいを応援する世界中の『アカウント』(やっぱり応援する気持ち)が決着の決め手になりました。
これらはどれも『人は一人では生きていけない。周りの人がいるから生きていけるし頑張れる』というメッセージとしてまっとうであり、素晴らしいとは思うのですが、一方で、やっぱり『主人公が一番凄い感』は薄れてしまうので、エンタメ要素としては、少しだけ弱くなってます。
しかして、この映画は違います。
ケイくん(竜)を見つけられた決めては、『ベルの歌』なんですよね。
しかも、『竜を助けたいという思いで作ったベル(スズ)のオリジナルラブソング』を、
『お兄ちゃんに感謝し、支えたいと考える天使(トモくん)が流した(歌った?)』から、竜とそばかすの姫は出会うことが出来たんですよ。
これ、エモくない!?最高じゃないですか?
すずの思いだけじゃ、竜にはたどり着けなかったんですよ。
天使――トモくんが竜のことが大好きで、かつベルにもひかれたから、3人は出会うことが出来たんですよ。
それぞれが相手を直接的に思う絆が、それぞれの人生を変えるきっかけになるとか、ほんとにいい。
ってゆーかぶっちゃけ、個人的なことを話しますと、僕自身実は、親から虐待とも言えるしつけを受けてた時期がありまして、そのとき、今もお世話になっている親友に手を差し伸べられて、自分の実家から脱出できた、という経緯がありますので、このストーリーは個人的にめちゃくちゃ刺さってしまいます。
最後の“U”からのメッセージも素晴らしかったです。
『現実はリセットできないが、”U”ではそれが可能。新しい人生を歩もう。世界を変えよう』(細部は違うかも)
――この台詞は、冒頭にも出てきました。
僕、最初にこの台詞を聞いた時は、いまいちな印象を持ちました。
『いや、たとえネット世界でも、人生のリセットとか無いでしょ?自分は自分やろ』って。
でも、違いました。
この作品で伝えたかったことは
『ネットはきっかけに過ぎない。
新しい場所で、新しい人に出会うこと。
そうすることで、あなたは自分の人生を、あなたが生きる世界を、どうにでも変えることができる。
インターネットはその手段の一つだ。
さぁ、あなたも、もし今の人生に不満があるなら、新しい一歩を踏み出そう』という意味だったんですね。
細田守監督、素晴らしい映画を、ありがとうございました。
竜とそばかすの姫の記事
→【竜とそばかすの姫】天使(クリオネ)の正体は誰?トモくん、AIの可能性を考察!(ネタバレ注意)
→竜とそばかすの姫の脚本・ストーリーがひどい!ツッコミどころ多すぎてつまらなかったので、おかしいところまとめ(ネタバレ注意)