MTGの売上が昨年度比54%に下がった!?原因を考察してみた!

ツイッターでカードゲーム界隈のリストを眺めてたら、こんなツイートが見られました。




まじかー。
売上げがここまで減ってるとは思いませんでした。


そこで今回は、私なりに、MTGの売り上げが下がった理由を考えてみました。

なお、管理人はM15からマジックを始めたカジュアルプレイヤーであり、
競技マジックにそこまで造詣が深くないこと、
この記事はあくまで、私見を述べているということを、予めご了承ください。






昨年度比とはどの期間を指すか


売り上げが半分に落ちてしまった原因を考える前に、
『昨年度比』とは、どの期間を指すのかをはっきりさせましょう。

池田店長の呟きによると、今年度4月~10月末と、昨年度の4月~10月末の比較のようです。
その期間のMTGの商品といえば……


昨年度4~10月→イニストラードを覆う影/異界月/カラデシュ
今年度4~10月→アモンケット/破滅の刻/イクサラン


もちろん、これら以外にもコンスピラシー(ドラフト専用セット)や、統率者デッキなど、
様々な商品が発売されていますが、スタンダード(メインの遊び方のルール)で使えるセットで言うと、これら3つずつが対象になります。

その他の商品はそこまで年度によって売り上げに差がないと考え、この記事では、考慮しないことにします。



売り上げが半分近くに落ちてしまった原因は?


それでは、MTGの売上げが半分になってしまった原因を私なりに考えてみます。
理由は、大きく分けると、2つだと思います。

1,魅力的なカードの減少
2,ウィザーズが信用を失ってしまった

それぞれ、詳しく述べていきます。


1,魅力的なカードの減少


前年度、イニストラードを覆う影/異界月/カラデシュは、非常に魅力的なカードで溢れたセットでした。
特に、『カラデシュ』は、ここ数年で見ても非常に面白いカードで溢れたセットです。
メインデザインを務めたマローも『本当に凄いセット』と豪語するだけあります。




『面白いカード』といってもどんなものを指すのか、普段マジックをプレイされていない場合は、
イマイチ、ピンと来ないと思います。
簡単にいえば、『凄いことができそうだけど、何に使うかイマイチわからない。デッキビルダー魂を揺さぶられるカード』にあふれているといったところでしょうか。




これらのカードは『アーティファクト』と言われるもので、所謂『どんな色のデッキにも入れることが出来るカード』です。
普段はMTGのカードは白、青、黒、赤、緑に分かれており、必然的にカードの組み合わせも色によって縛られるんですが、
今回のカラデシュはアーティファクトがテーマのセットのため、カードの組み合わせも無数に広がっています。



カラデシュの魅力はそれだけではありません。
カラデシュでは、今までのMTGにはない要素が2つも追加されました。
『機体』と『エネルギー』です。

まず、機体は文字通り、クリーチャー(モンスター)が乗り込めるアーティファクトで、
相手のターンはクリーチャーではないので除去が効かなかったり、
早いターンから強力な動きをしたりと、非常に魅力的なカードが多いです。




特に『密輸人の回転翼機』は2T目から飛行3/3という、現代のMTGではありえないほどの強力なクリーチャーでありながら、
搭乗が1と非常に容易に扱うことが出来ます。
さらに戦闘時に手札を入れ替えることで事故を軽減するなど、とんでもない性能をほこります。
(MTGでは他のカードゲームと違いデッキに土地が多数入っているため、後半に手札入れ替えがあるのとないのとでは大きな差が出る)

後述しますが、この密輸人の回転翼機は後ほど禁止カードとなり、
ウィザーズの信用を失うきっかけの一枚となりました。


次にカラデシュ2つめの新要素『エネルギー』についてです。
これまでMTGでは能力のコストとして土地のマナを使うことが基本でした。
しかし、『エネルギー』は全く新しいリソースを用意したのです。

マニアックな例えをするなら、カードヒーローの『ストーン』のような管理ができるようになったのです。




これらのカードを見ただけではわかりませんが、
エネルギーを貯めることは比較的容易です。
例えば、こんなカードがあります。



ライフを回復しながらエネルギーを貯めるので、
相手の攻撃に耐えながら、エネルギーをガンガン貯めることが出来ます。
(MTGは他のカードゲームに比べると、ライフに対して攻撃力が低いので、回復が強いです)

これで序盤を耐えて、先程紹介した『霊気池の驚異』で強力なカードを叩きつける動きが流行し、
後ほど、『霊気池の驚異』は禁止カード入りを果たしました。
これもまた、ウィザーズが信用を失うきっかけとなったでしょう。








また、昨年度発売の魅力的なカードは、カラデシュだけではありません。
『異界月』ではこんなカードが有りました。



エムラクールはMTGにおけるラスボスのような存在の一人(?)で、その能力も非常に強力。
相手を操ることが出来るので、基本的に、どんなカードでも自爆させることが可能です。
ストーリーでも、一つの国を滅ぼしかけたほどで、プロツアー(世界大会のようなもの)でも大活躍しました。


しかし、プロツアー決勝戦にて、エムラクールは一枚のカードに敗れ去ります。
それがこのカード。



このリリアナというお姉さんは、長年、主人公たちのライバルキャラのようなポジションで、
少なくとも正義のために戦うようなキャラではありませんでした。
しかし、エムラクールに世界が滅ぼさんとしたそのとき、流石に見てはいられないと、
主人公たちに手を貸し、エムラクールへと向かっていきます。

イメージ映像がこちらです。





エムラクールは人々の精神を操りますが、リリアナはゾンビ使い。
ゾンビは知性をもたないので、エムラクールにも操られず、リリアナが唯一、エムラクールに対抗しうるということです。

何がいいたいのかと言えば、MTGのプロツアーという、世界最高峰の大会の決勝で、
このストーリーと全く同じことが起こったのです。
まるで上の動画と同じように、大量のゾンビが、エムラクールを押しつぶしました。





ストーリーの強キャラを、しっかりと強カードに仕立てるデザイン、デベロップの力。
さらに、そのフレーバーがガチの大会で再現されるという奇跡。
個人的に、最も感動した瞬間です。



とにかく、昨年度のウィザーズは、色々と神がかっていたのです。






一方、今年度のMTGのセットはアモンケット/破滅の刻/イクサランです。
これらは残念ながら、昨年度に比べると、カードの面白さ、強さ共に、昨年度には劣ってしまっています。

勿論、強いカードはいくらか出ています。
特徴的なのは『神』のカードでしょう。




しかし、『神』という概念自体、以前『テーロス』というセットでやってしまっており、
二番煎じ感は否めません。


何より、カラデシュのアーティファクトのように、創作意欲を掻き立てられるカードが少ないのです。
どちらかと言えば、所謂デザイナーズデッキと呼ばれる、特定の種族を集めてデッキを作ってね!という、
『作らされてる感』が強いのです。


また、ストーリー上の強キャラのカードパワーも、大きく下がりました。




こちらのニコル・ボーラスは、先程のエムラクールに勝るとも劣らない程の重要キャラで、
MTGラスボスの一角です。
デュエマに出張したので、ご存知の方も多いかもしれません。

しかし、その使用率はエムラクールに比べると圧倒的に低いです。

勿論、これはしょうがない部分もあります。
先程のエムラクールは結局禁止カードとなり、ウィザーズは『ストーリーキャラを目立たせるために強くしすぎると壊れになりかねない』と判断し、
ストーリーキャラのカードパワーを下げるようになりました。
ニコル・ボーラスはそんな方針の被害者です。

結果的に、壊れたゲームは減りましたが、その分、地味になってしまい、
『ニコル・ボーラス大好き!ニコル・ボーラスでデッキを組むぞ!!』というプレイヤーを、少なからず落胆させました。



まずはここまで、昨年度と今年度を比べると、
MTGは単純に、魅力的なカードが減った、というのが、売り上げが下がった原因だと思われます。






2,ウィザーズが信用を失ってしまった


個人的には、こちらが本題です。
今年に入ってからのウィザーズは、続け様に、その信用を失っていきました。



まずは初っ端、1月10日。スタンダードにて、先程紹介した『エムラクール』と『密輸人の回転翼機』を含む3枚のカードが、スタンダードで禁止となりました。
これには、多くのプレイヤーが驚き、落胆し、怒りを露わにしました。


当時の反応は、こちらの『イゼ速』さんが最もわかりやすいでしょう
→(外部サイト)禁止制限告知:スタンダードにて反射・エムラ・コプター、モダンにてギタ調・墓トロールが禁止に


他のカードゲームをプレイされている方からすると、「禁止が出たぐらいでなに騒いでんだよw」となるかもしれませんが、
MTGにおいてスタンダードで禁止が出ることは、実に5年半ぶりのことだったのです。

暗黙の了解として、『MTGでは禁止カードは出さない』という空気がありました。
『禁止カードを出すのはプレイヤーに対して不誠実。出してしまえばクリエイター失格』――ウィザーズ公式自体がこのような態度をとっているという信頼感もあっただけに、この禁止カードの発生は、大量のプレイヤーを困惑させました。


しかも禁止の理由の文章が、今までとは異なり、いまいち説得力の欠ける理由だと感じるプレイヤーが多いことも炎上の理由となりました。
→(公式)2017年1月9日 禁止制限告知



悲劇はこれだけでは終わりません。
続いて2017年4月27日に《守護フェリダー》というカードが禁止されることになりました。
これもまた、多くのプレイヤーの批判が殺到しました。

→(外部サイト)2017年4月28日発効禁止制限告知:フィードバックを元に《守護フェリダー》を追加で禁止

この禁止のヤバイ点は2つ。
一つは、この《守護フェリダー》というカードの驚異を、ウィザーズが把握していなかったことです。

ウィザーズは1セットのカードを作るのに、約2年間の月日をかけます(現在は2年半)
最初の1年で大まかなカードをデザインし、残り1年で、競技に耐えるカードとして別チームが精査をしていきます。

《守護フェリダー》はこの精査期間があったにも関わらず、同じセットのカードとの無限コンボが見逃されたのです。
(厳密には一つ前のセット)
勿論、ウィザーズだって人間ですから、ミスはつきものです。
しかし、既に今年のはじめに禁止カードを出しているだけに、心情的にヘイトを貯めるのは仕方ありません。


しかも、この禁止のさらにヤバイ点は、この発表のわずか2日前に、ウィザーズは『今回のスタンで禁止カードはありません』と表明したことでした。
ウィザーズは毎回、禁止カードを出すタイミングを決めています。
そこで、「あと3ヶ月はスタンダードで禁止カードは出しません」といったにもかかわらず、二日後に手のひらを返したのです。

勿論、これには様々な理由があります。
プロプレイヤーから「《守護フェリダー》は禁止にしないと環境を歪めるよ」というフィードバックがあったり、
MO(ネットのMTG)のデータから、《守護フェリダー》を使った無限コンボが猛威を奮っているという事実を把握し、
《守護フェリダー》を禁止することを決定しました。

この禁止自体は、ゲームを面白くするということで歓迎されましたが、
禁止カード告知のわずか2日後に追加禁止を出すという行為が、ウィザーズの信用を大きく下げます。
極端な話、プレイヤーは「いつ自分の使うカードが禁止になるかわからない」という恐怖と戦いながら、ゲームをプレイする状況に陥ったのです。
また、「禁止カードが今回無いから、無限コンボデッキを買って作った」というプレイヤーからすれば、流石に深い悲しみに襲われました。






止めとなったのが、2017年6月14日の禁止改定です。
先程紹介した『霊気池の驚異』が禁止カードになりました。

ここ5年以上、スタンダードで禁止カードがなかったにも関わらず、
今年に入って5枚目の禁止カード。
『MTGは禁止カードを出さない』という信頼をもってMTGを始めたプレイヤーからすれば、大きく裏切られたように感じたでしょう。

当時の反応はこちらを御覧ください。
→(外部サイト)2017年6月13日禁止制限告知:スタンダードにて霊気池の驚異が禁止、PT前の改訂が廃止に


繰り返しますが、この禁止改定自体は、間違いなくスタンダードの環境を面白くしたと思いますし、
ゲームとしての完成度は間違いなく上がったと思います。
しかし、そもそも『MTGは禁止カードに頼らず、プロの制作陣が叡智をかけて上質なセットを作ってくれる』と信じていたプレイヤーからすれば、
この禁止カードの多さは、MTGのスタンダードを引退するに十分な理由となったでしょう。


MTGにはスタンダード以外に『モダン』や『レガシー』といったルールが有り、
粗くいえば、ずっと同じカードが使えるという、遊戯王カードのようなルールです。
わざわざ禁止カードに怯えながらスタンダードをやるぐらいなら、モダンやレガシーをやればいい、と判断したプレイヤーは少なくないでしょう。

そして、モダンやレガシー勢は新セットのパックを剥くことは殆どありません。
欲しいカードは数枚で、シングル購入すれば済んでしまうからです。


以上が、MTGの売り上げが今年になって半分に減ってしまった理由です。



まとめ


以上、私なりに、MTGの売上げが昨年度比54%になった理由をまとめました。

昨年度はカラデシュを始めとした、カードパワーが高く、見たこともないようなカードが数多く発売されました。
しかし、今年に入って、それらのカードの多くが禁止カード入り。
ウィザーズがスタンダード環境の健全化に失敗したため、プレイヤー購買意欲が下がってしまいました。

また、これ以上、禁止カードを出さないようにと、ウィザーズがカードパワーを下げた結果、
今年度の発売カードはどれもぱっとせず、魅力の欠けるセットになってしまいました。



勿論、これらの話は「そう考えるプレイヤーがいる」というだけの話で、「全てのプレイヤーがこう感じた」というものではありません。
私自身はMTGが今でも大好きですし、カジュアル勢としてFNMに参加したり、ドラフトやシールドで遊んでいます。
(もっと言えば、MTGよりもマローの大ファンです。彼の日本語記事は全部読みました)


しかし、客観的に見て、売り上げが半分になっている以上、想像以上に、ウィザーズへの不信感が高まっているようです。

来年はMTG25周年。原点回帰となる『ドミナリア』も発売ということで、是非とも、売り上げが復活することを望んでいます。




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