【呪術廻戦 二次小説】東堂と虎杖の「存在しない記憶」を捏造してみたwww【SS】

どうも、ロイドです。
今回は呪術廻戦の東堂葵が面白くて好きすぎるので、彼をテーマにした二次小説を書いてみました。

題して

東堂と虎杖の「存在しない記憶」を捏造してみた
~もしも高田ちゃんが虎杖を好きになってしまったら?~


です!

楽しんでいただければ幸いです。


※キャラ崩壊、設定矛盾などが多数ある可能性があります。
苦手な方はご注意ください。




動画版はこちら!









【呪術廻戦】東堂と虎杖の「存在しない記憶」捏造SS:第一章



――渋谷での戦いが起きる少し前のある日。
虎杖悠二は、東堂葵に半殺しにあっていた。
一方的と言ってもいいほどに、ボコられ続ける悠二。
なんとか反撃しようと試みるも、その全てにカウンターを決められる。

それもそのはず。
本日の悠二は、『右手を使うことを封じられて』いた。
呪霊との戦いは、常に五体満足でいられるとは限らない。
手が使えないこともあるだろう。
悠二の武器は黒閃にせよ、逕庭拳にせよ、手を主体としたものだ。
その武器を半減された中で、どこまで戦えるのか――二人は、それを趣旨とした訓練を行っていたのだ。
場所は呪術高専の訓練場。二人は壁を背負わないように注意しながら、戦いを繰り広げていく。

二人の戦いは序盤からずっと東堂有利の一方的なものではあったが、徐々に悠二が右手を使えない戦いに慣れてきたように見える。
少しずつ東堂の動きに対応していく悠二。
悠二は最後には、あえて右手が使えない事をフェイントとし、東堂を自分の右側に誘い込み、蹴りを一発、東堂のみぞおちに決めた。

「ぐふっ……ブラザー(虎杖)、ここまでにしておこう」
「……オッケー。サンキューな、東堂」
東堂の言葉に、悠二は笑顔で礼を言う。
その顔はあれだけ東堂に殴られたにしては、殆ど腫れておらず綺麗なものだった。
東堂がかなり手加減していたことが伺える。

「なに、ブラザーのためだ。何枚でも一肌脱ごうというものだ」
「肌って一枚以上あんの?」
「それよりブラザー、さっきのフェイントは見事だった。あえて右側に死角を作って相手を誘い、逆に相手の死角から蹴りを入れたのが素晴らしい。強者ほど相手のすきや弱点には敏感だからな。上手くやれば、格上相手にも一泡吹かせられるかもしれん」
「いや……でも、、まだまだだ。それを実行するまでに時間がかかりすぎた。東堂が手加減してくれなかったら、最初のラッシュでやられてたよ」
「フン……それに気づいているならば十分だ。我々は現在、相手に勝とうとしてるのではない。己の課題を見つけ、来たるべき戦いのために鍛えることが目的なのだからな」
自分の弱点を自覚することはその第一歩だ、と東堂は続けた。

「ありがとう、東堂。今日でもう訓練は終わりだけど、この3日間楽しかった。お礼に、ラーメンでもおごるよ」
「うむ、ありがたく頂こう」

二人はそのまま、ラーメン屋へと向かう。



――ラーメン屋にて。

”ズゾゾゾゾッ!!”
もの凄い勢いでラーメンを啜る二人。
二人の脇にあるカラの丼ぶりから察するに、悠二は3杯目、東堂は4杯目のラーメンのようだ。

「ヘイッ、追加のギョウザお待ち!」
ラーメン屋のオヤジが置いた皿にむかって、一斉に箸を向ける2人。
一瞬で、6個あったギョウザは消え去ってしまった。

「いやー、ウマいな、東堂!」
悠二が笑顔で東堂に言葉をかける。
「ああ……しかもそれがブラザーの奢りともなると格別、だ」
東堂はギョウザを飲み込み、スッと目を細める。
「そういえば……ブラザーからラーメンを奢ってもらうのは、これが三度目、か……」
「いや、今日が初めてだけど?」


「一度目は、俺が高田ちゃんにフラれた日だった……ブラザーは、悲しむ俺を心から慰めてくれたな……」
「何の話ですか??」
「そして二度目……あの時ほど、ブラザー、お前を殺しそうになった日は無かった……」
「もしもーし?届いてますかー?」
「そう、あの時、まさに、あの頃……俺たちの青春は、ピークだったよな……」
「あ、これ回想入るパターンですねー?」


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呪術廻戦 二次小説

もしも高田ちゃんが虎杖に告白したら
~東堂の【存在しない記憶】を妄想してみた~

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――俺の名は東堂葵(あおい)。
中学3年生だ。
先日、俺は高田ちゃんに告白した。

ブラザーには止められたが、かのアン・サリバンはヘレン・ケラーにこう説いた。
「やる前に負けることを考える馬鹿がいるか」と。
流石はサリバン先生。素晴らしいお言葉だ。
三重苦のヘレン・ケラーに向ける言葉としてもぴったりだ。

……まぁ、結果としては、高田ちゃんには『私、好きな人がいるの』とラブレターを破られてしまったわけだが。
その後にブラザーに奢られたラーメンが染みた。
味噌ラーメンだっていうのに、とんでもなく塩味の効いた、素晴らしいラーメンだった。
ブラザーのおかげで、俺は立ち直れたと言っていい。
今となってはあれは、高田ちゃんなりの照れ隠しだったのでは?という気すらしている程だ。

今日俺は、ひとつ思い出話をしようと思う。
俺がブラザーをぶち殺した話だ。

……ああ、言い方が剣呑(けんのん)すぎたか。
勿論、本当に殺したわけではない。
ちゃんと半殺しでとどめた。

あの日の俺は最悪だった。
なぜならば、一番の親友と、一番の愛する人を、同時に失ったからだ。
俺の人生であの日ほど、神を恨んだ日はないだろう。

今日話すのは、そんな思い出話だ。





あれは、俺が高田ちゃんに振られてから2ヶ月が経ち、季節としては夏が近づいてきた頃。
この日の放課後、俺とブラザーは、珍しく別行動をとっていた。
というのも、この前ゲーセンで俺がボコした隣町の学校のやつらが、お礼参りと称して、俺を呼び出したからだ。

ブラザーとゲーセンに行って、ブラザーがトイレに行っている間に3人に絡まれたので、軽くノシてやったところ、俺に復讐を息巻いているというわけだ。
俺が呼び出されたことを知って、ブラザーは一緒に行くと言ってくれたが、俺は丁重にお断りした。
これは俺だけの問題であり、ブラザーは一切関係がないのだ。ブラザーを巻き込むのは筋違いというものだろう。

もちろん、本当にヤバいのならば俺もブラザーの手を借りようと思うが、おそらく相手はせいぜい50人程度でやってくるだろう。
この程度の数で、ブラザーを巻き込むはやりすぎだ。
蟻が100匹集まったからといって、救援を頼むアリクイはいないだろう。

そんなわけで俺は、隣町の蟻どもを踏み潰しに行くべく、呼び出された隣町の空き地へと向かった。
残されたブラザーはと言うと……

「……暇だなぁ」

学校の屋上で空を見ていた。
普段は俺とゲーセンに行くか高田ちゃん談義に花を咲かせるか(ブラザー曰く、『談義』ではなく、俺の講演会ということらしいが)の時間だからな。
俺が居なくなると、途端に暇になってしまうということだ。
やや不謹慎かもしれないが、ブラザーの中で俺の存在が非常に大きいというのがわかって、俺としても少し喜びを感じてしまうな。

「どーすっかなぁ、やっぱり東堂の様子でも見に行って、ヤバそうだったら助けるか?」

悩むブラザー。
安心してくれ。ブラザーが来る頃には、もう終わっていることだろう。

「でもなぁ、東堂が大丈夫って言ってたし……アイツがピンチになるなんて、それこそ化け物でも襲われない限りありえないか」

俺たちはこの翌年以降に、呪術の存在を知るわけだが、この頃はそういった概念は認識していない。

「あ!化け物と言えば!」

ブラザーが立ち上がる。
どうやらブラザーは、最近、この学校で噂になっている怪談を思い出したらしい。

曰く、『放課後の旧校舎には、化け物の気配がする』というものだ。
俺たちの学校の裏には、古い木造の旧校舎が存在する。
中はボロボロで危険なので、そもそも滅多なことでは人は近づかないが、たまに探検と称して、好奇心旺盛な奴らが踏み込むのだ。
それが、一週間ほど前から旧校舎に足を踏み入れた途端、建物全体が揺れたり、奇妙な音が鳴り響いたりする、というものだ。
女子生徒の間では、この音を聞いた人間は呪われてしまうと、もっぱらの噂だ。

「奇妙な音と、建物の揺れ……ね。まさかあの旧校舎に、なんらかセキュリティが仕掛けられていて音がなってる……なんてことはないだろうし」

ブラザーは独り言を言いながら、屋上から階段を駆け下りていく。

「化け物とか呪いとかあるわけないけど、どーせ暇だし、いっちょ探検してみるか♪」

ブラザーは笑顔で旧校舎に向かって走っていった。



「……なんも無いじゃん」

ブラザーが旧校舎にたどり着いて10分。
奇妙な音もしなければ、校舎が揺れるということもなかった。

「旧校舎の入り口で身構えてたのに、なんも起こらないでやんの」

ブラザーはため息を吐いて、旧校舎の廊下を歩き出した。
木造の廊下はギシギシと音を立て、たまに割れた窓ガラスの破片を踏んで鳴るパリパリという音が合いの手を入れる。

「化け物は教室の中にいんのかなぁ」

一階の一番奥の廊下までまっすぐ歩いて、特に何もなかったブラザーは、二階への階段と、一番奥の教室の引き戸を交互に見比べる。
この校舎は3階建てで、階段はところどころに穴が空いているものの、登ることは可能そうだ。
一方、引き戸はレールから外れかけており、簡単には開けるのが難しそうだ。

「……全部の教室を見るのはたるいけど、なんかこの教室は怪しい気がするな」

引き戸にはのぞき窓などは付いておらず、教室の中をうかがい知ることはできない。
ブラザーはゆっくりと、引き戸に手をかけた。
案の定、引き戸はガッ!ガッ!と鈍い音を立て、簡単に開くことはない。

「……ヨイッショ!っと」

ブラザーは器用に引き戸を軽く持ち上げ、一発で戸をレールにはめ直す。

「…………………………ゴクリ」

やや緊張した表情で、ブラザーは引き戸を睨みつける。
そして、意を決したように、勢いよく引き戸を開いた。

「!! ……」

ブラザーはそのまま勢いよく教室に入り、教室の中をねめ回す。
しかし、中はまさに荒れ果てた教室といった体で、怪しいものなど一切見当たらない。
ただ、静寂だけがブラザーを包んでいた。

「な~んだ……やっぱり化け物や呪いなんかあるわけないか。無駄に一人で緊張しちゃったよ」

ブラザーは苦笑して、頭をかいた。

「完全に無駄足だったなぁ……今日はもう帰ろ」


ブラザーがそう言って廊下に出た瞬間、”ドシン!!”と大きな音が、旧校舎に響き渡った。

「!?」

慌てて振り返り、教室を見渡すブラザー。
しかし、教室自体は先程と同じく、壊れた机と椅子が転がっている程度で、特に変わったところは見られない。

”ドシン!ドシン!”

ブラザーが教室を観察している間も、断続的に大きな揺れが、旧校舎に響いていた。

「――上か!?」

ブラザーは直感的に、教室の上を睨んだ。
なるほど、確かにこの怪しい音と揺れの発生源は、上からのようだった。
ちょうど、アパートやマンションで上の住人が騒いでるような感覚だ。

ブラザーは今度こそ教室を飛び出し、そのまま横の階段を駆け上がっていった――。






【呪術廻戦】東堂と虎杖の「存在しない記憶」捏造SS:第二章



「……」

ブラザーは旧校舎の3階――最上階までたどり着き、油断なく廊下を歩いていた。
既に揺れは止まっている。

あの後、一目散に二階に上がったブラザーは、二階の教室を回るか、それとも一気に三階に上がるかの二択を迫られた。
”ドシン!ドシン!”と定期的に響く揺れはどこから来ているのだろうか?
ブラザーは目をつぶり、全感覚を聴覚と触覚に委ねる。
流石はブラザーといったところで、集中した結果、揺れの発生源は三階だとブラザーは突き止めたのだ。

早速ブラザーは三階まで登って――そこで、揺れがやんでしまった。
先程まで”ドン!ドン!ドシン!”と響いていた揺れは、ブラザーが三階に登った瞬間、同時にピタリと止まってしまったのだ。

「気づかれてる……んだよな?」

ブラザーは警戒心を高めながら、ゆっくりと廊下を進んでいく。
先程までの揺れの発生源はおそらく一番奥の教室――旧校舎の入り口すぐの階段を登りきって最初の教室だろう。
3階ともなると、生徒たちが立ち寄ることもほぼないせいか、廊下の荒れ方は一階ほどではなかった。
窓ガラスもヒビこそ入っているものの、床にガラスが散乱しているということもない。
また、床の傷み方もそれほどでもなく、ブラザーが歩いても、そこまで大きい音をたてるということもなかった。

「………………」

ブラザーはチラリと右側の空き教室へと視線を走らせた。
3階の教室は一階と違って、ほとんどの教室の戸が開いていた。
廊下からでは当然、教室の全容は見えないが、それでも、なにか問題があるようには見えなかった。

やはり、一番奥の部屋が怪しいと考え、ブラザーはゆっくりと歩いていく――

”~♪”
「!!」

獲物を探す獣のように慎重に進んでいたブラザーの耳に、突然、かすかな音楽が聞こえてきた。
とはいえ、音は本当にかすかにしか聞こえておらず、なんの音楽なのかうかがい知ることはできない。
しかし、ブラザーが前に進めば進むほど、少しずつではあるが、音も大きくなっているようだった。
ブラザーは横の空き教室を覗くことを忘れないようにしながら、足を早めていく。
そして、ついに視界に一番奥の教室が映る。

その教室は、明らかに他の教室とは違う雰囲気を醸し出していた。
その手前までのすべての教室の戸は、前か後ろのどちらかの戸は開いていたというのに、一番奥の教室だけは、前後どちらの戸も、ピッチリと閉められていた。

「……明らかに、あやしいよな」

ブラザーは小さくつぶやく。

”~♪ ♪! ~~~♪♪♪!!”

最初かすかに聞こえるだけだった音楽は、いつのまにかほぼ聞き取れるようになっていた。
かなりテンポの早い、明るい音楽だ。
クラシックなどの古臭い音の並びではなく、現代のJPOPの雰囲気。
というよりも、この音楽は――

「アイドルソング?」

この音楽は流行に疎いブラザーにも聞き覚えがあるほど有名な、某国民的アイドルグループの歌だった。
音楽に合わせ、大勢の女性が並んで踊るアレだ。
非常に有名な曲で、それこそ街を歩けば、若者向けのどこかしらの店では流れているだろう。
だから、この歌が学校で流れるということも、不思議なことではない。
ここが【誰も居ない放課後の旧校舎】でなければの話だが。

「…………」

ブラザーはとまどいながらも、ついに一番奥の教室の真ん前までたどり着いた。
耳を澄ますまでもなく、音楽は間違いなく、目の前の教室の中から聞こえてくる。
楽しげな音楽と、華やかのアイドル達の歌声が、かなりの大音量で流れているのがわかる。
その曲は本当に明るく、これまでのブラザーの警戒していたものとは余りにかけ離れていて、それがかえって不気味だった。

このまま、教室の戸を開けるべきだろうか?
それとも、教室の上の窓からなんとか中を覗き込んでみるか?
はたまた、教室の下にある小さな戸から中を伺うべきだろうか――?

ブラザーが逡巡していると、突如また”ドシン!!”と大きな音が旧校舎を揺らした。
言うまでもなく、震源は目の前の教室だ。
「!」
ブラザーは反射的に取っ手に手をかけ、勢いよく引き戸を開いた。
教室の中の光景は、ブラザーが予想だにしていなかったものだった――。




そこには”天使”がいた。
旧校舎という掃き溜めの中を舞う、一人の天使だ。
顔はブラザーに背を向けているので見えない。
艷やかな髪は左右に束ね、ツインテールにしている。
身長(タッパ)は非常に高く、明らかにブラザー以上ある。
そして、黒いセーラー服に包まれたデカい尻(ケツ)が音楽にあわせて、魅惑的に揺れ動く――。

”ドシン! ドン!ドン!ドシン!”

そして天使は音楽にあわせてステップを踏む。
女子とは思えないほどの力強いステップは、踏み込むたびに古い校舎を大きく揺らす。
その踊りはまさに天女の舞いとも言っても過言ではないもので――

「なぁ、何やってんだ、お前」

こんな素晴らしい舞踊を生で見ることができたと言うのに、この男は無粋にも、女神に向けて心無い言葉を言い放った。
ヴィーナスはブラザーの言葉にギクリ、と動きを止め、ギギギ……とゆっくりブラザーの方へ振り向く。
その顔は言うまでもなく――我らがアフロディーテこと、高田ちゃんであった。

高田ちゃんはブラザーを見て、一瞬「しまった!」という汗を流し――その後、ブラザーを強く睨みつけた。
「……見たわね?」
「何を?」とブラザーは答える。

「だから……見たんでしょ?」
「だから、何を?」
ブラザーのとぼけた応答にしびれを切らしたのか、高田ちゃんは大きく足をブラザーに向けて踏み込み口を開く。

「だーかーら!
今までは家で練習してたのに、最近、お父さんの再婚予定の相手が家に来るようになって、なんとなく家に居づらくなって、
お金もない中学生の困った私が、この旧校舎なら誰にも見られずに練習できるだろうと思って行っていた、
私のアイドルを目指したダンスの練習を、よ!!!」
一息で言い切った高田ちゃん(流石は未来のトップアイドル。滑舌、声量ともにこの頃から申し分ない)に対し、ブラザーはパクパクと口を開閉し、ようやく、

「えーと……自己紹介では言わなくていいことまで言っちゃうタイプ?」と返した。

「~~~!
もういいわよ!
とにかく、出てってくれる!?
ここは私が先に練習してた部屋なんだから!!

ああでも!別にこの校舎が私に所有権があるわけじゃないし、あなたにそれを命令する立場に私はないわね!
あなたが私の命令を効く義務もないしね!
わかった、もういい!私が出ていく!!」

高田ちゃんは凄まじい速さで、そう叫びながら、音楽を流していた持ち運びできるスピーカーやら、自分のスマホやらを回収していく。
恐らくは、この校舎で人に見られるとは夢にも思っていなかったのだろう。
まさに頭の中は大混乱。ブラザーからも、高田ちゃんの顔は真っ赤に高揚し、狼狽しているのがひと目で見て取れた。

「なぁ」
ブラザーはそんなドタバタしている高田ちゃんに声をかける。
「何よ!?」
高田ちゃんの剣幕に、ブラザーはガリガリと頭を掻きながら、
「なんかよくわかんないけど……練習してんだろ?だったら、ここで続けりゃいいじゃん」
「アンタがいるでしょ!」
「いや、見られたくないなら、別に消えるけど……」
「嘘!?」
ブラザーの言葉に、高田ちゃんは嬉しそうな表情を浮かべる。
そして、次の瞬間、また嫌そうな顔をしてブラザーに”ビシッ!”と指を差した。

「嘘ね!そういってアンタは、教室の戸の隙間から、隠し撮りをする気でしょう!」
「いや、しませんけど」
「そうやって撮った動画を、クラスのLINEのグループで晒し者にする気でしょう!!!」
「いや、やんないし、クラスのLINEグループとか、俺知らんし」
「そうして、ひとしきりクラスで笑いものにした後、最後はTik tokとインスタとYou TubeとTwitterにUPして、未来永劫晒し上げるつもりね!!!」
「ああー!もう!しないって言ってるだろ!!!」

ブラザーも叫び返し、2人は肩で息をする。
しばらくの間、2人のハァハァという荒い息だけが、教室に響いていた。
そうして、先に口を開いたのはブラザーだった。

「ハァハァ……なぁお前、隣のクラスの高田だろ?この前、東堂をフッた」
「ハァハァ……何よ今更、白々しい!どーせ私のこと知ってて、晒し上げるために探してたんでしょ!?」
「だあああああ!もう!なんでそこまで自分本位に考えられるかねぇ!?お前、やっぱり東堂と付き合えよ!!ある意味、めっちゃお似合いだよ!!」
ブラザー!!おお、ブラザー!!!
なんて良いことを言ってくれるのだ!!
完璧だ……やはり俺の大親友はお前だけだ!!

俺の感動を脇に置いて、2人は会話を続ける。

「東堂……?ああ、あのゴツいの。嫌よ、そんなの」
「う……まぁ、そりゃ、好きな人がいたら、断るよな」
「………………」
ブラザーの言葉に、高田ちゃんはなぜか急に黙り込む。
ブラザーは不思議そうに首を傾げ

「あれ?そう言って東堂をフッたんだよな、お前」
「………………あれは…嘘よ」
「嘘?」
「本当は……やりたいことがあったから、男と付き合ってる暇なんか無いのよ」
「なんだよ、やりたいことって」
「……………………」

高田ちゃんはたっぷり時間をかけて、口を何回か開いては閉じ、最後には小さい声で「なんで初対面のアンタに、そんなこと言わないといけないのよ」と言った。
ブラザーはそれを聞いて、一瞬ムッとした表情を浮かべたが、すぐに正論だと気づいたのだろう。大きなため息を吐いた。
「はぁ……そりゃ、そうだ。わかったよ。急に教室に入って、喧嘩腰になって悪かった。俺がこの教室を出ていくよ。で、ここには二度と近づかない。それでいいだろ?」
ブラザーはそう言って、踵を返し、教室の出口へと向かっていった。

「待って!」
高田ちゃんがブラザーを呼び止める。
ブラザーは首だけ振り向き、
「何?」と訪ねた。

「アンタ……本当に私を知ってて、ここに来たんじゃないの?」
「んなわけねーじゃん。偶然だよ、偶然。今日はたまたまいつもツルんでる東堂がいなくて、退屈だったから、この校舎に探検がてら遊びに来たってだけ」
「……そ、そうだったの…………」
高田ちゃんはそれを聞いて、バツの悪そうな表情を浮かべ、さらに口を開く。
「えっと……その……ごめんなさい。あなたが、私のクラスの子に頼まれて、私を探しに来たと思って…………それで、その、ちょっと、興奮しちゃって……」
「ふぅん……なんかよくわからないけど、お前、クラスのやつらに狙われてんの?」
「ってゆうか……バカにされてるっていうか……」
「バカにされてる?何を?」

高田ちゃんはブラザーの問いに言うか言うまいか迷ったようだが、やがて意を決したのか口を開いた。
「その……私が、アイドルを目指してるって……」
高田ちゃんの声は、最後の方は消え入りそうなほど小さくなっていた。
それに対しブラザーは、全くピンときてない表情を浮かべる。
「? お前がアイドルを目指して、なんでバカにされんの?」
そのブラザーの言葉に、高田ちゃんはヒートアップする。

「っ! だって!変じゃない!私みたいにでっかい女が、かわいいアイドルを目指すなんて!!
普通アイドルっていうのは、ちっちゃくて、皆に愛されるような子がなるのよ!
私みたいな、遠目に見たら男と間違えられるかもしれないような女がアイドル目指すなんて、笑われて当然でしょ!?」
「そんなことないだろ」
ブラザーの否定は、いつものツッコミよりも、語気の強いものだった。
ブラザーは続ける。

「お前がアイドルをやりたいんだろ?
で、自分の夢に向かって頑張ってるんだろ?
だったら、それは変じゃないし、笑われるようなことでもないだろ。
そりゃ、中にはバカにするような奴がいるかも知れないけど……そんな奴、無視でいーじゃん」
「で、でも……実際問題、私みたいなでかい女がアイドルなんて、おかしいじゃない……」
「それこそ馬鹿じゃん。
身長が高いアイドルとか芸能人なんて探したらいっぱいいるだろ。
それに――」
お前みたいな女のほーが、俺は好みだけどな、とブラザーは締めた。

「っ!」
「とにかく、邪魔して悪かったな。俺はもうここに近寄らないようにするから、アイドルの練習、頑張れよ」
ブラザーはそう言って、素早く教室を出ていった。
後には、顔を赤くしてブラザーの出ていった戸を見つめる高田ちゃんだけが残されていた。




――翌日。昼休み。
授業が終わってすぐ、ブラザーは俺の席までやってきた。
「うぃーっす、東堂。昨日はどうだった?」
「フッ……あの程度の奴ら、俺のウォーミングアップにもならなかったな」
「何人居たんだ?」
「よく覚えてないが……76人だったかな。そのうち4人は女だったが、その中の一人が意外と強かったな」
「めっちゃ正確に覚えてんじゃん!てか、数多っ!」

そんな話をしながら、俺達は教室を出ようとする。
昼休みになったら購買でパンを買い、屋上で飯を食いながらダベるのが、俺とブラザーのいつものパターンだ。
しかし、この日はそのルーティンが崩れることになる。
教室を出ようとしたその瞬間、高田ちゃんが戸の影から現れたのだ。

「た、高田ちゃん!?なぜここに!?」
俺はドギマギしながら、高田ちゃんに尋ねるが、高田ちゃんは俺など目に入っていないように、ブラザーを睨みつけていた。
ブラザーといえば、気楽に「あれ、高田じゃん。よっ」などと片手をあげていた。

「……………………」
高田ちゃんはブラザーの挨拶には返答せず、緊張した面持ちで、変わらずブラザーを睨みつける。
なにか怒っているのだろうか、高田ちゃんの頬はやや赤く染まっている。
よく見ると、高田ちゃんは両手を背中に隠していた。もしかしたら、武器か何か持っているのかもしれない。
「「…………?」」
訝しげに構える俺たちに対し、高田ちゃんが、両手を勢いよくブラザーに差し出した。
その手には、ふろしき――中には、分厚い本かなにかが包まれているようなふろしきがあった。

「えーと……これは?」
ブラザーの問いに高田ちゃんは、
「お、お弁当よ!作りすぎちゃったから……持ってきたの!」
高田ちゃんは早口で言った。

お弁当……おべんとう?
おべんとう……オベんとう……オベんトウ…………オベントウ??
ナニソレ?オベントウ…………?

「え、弁当?ありがたいけど…なんで?」
「き、昨日のお詫びよ!借りを作るのは趣味じゃないの!!」
「へー……なんかよくわかんないけど、そういうことなら、ありがたく貰うわ。サンキュな」
「そ、そ、その代わり、放課後にはお弁当箱返してよね!早く洗いたいから!」
「あー、オッケー。HR終わったら、隣の教室行けばいい?」
「じ、じ、じ、時間が合うかわからないから、昨日会った場所に来てくれる!?」
「へ? あー……別にいいけど」
「じ、じゃあ、放課後来てくれる!? くれぐれも!一人でね!!!」
高田ちゃんはそう言ってブラザーを指差すと、さっさと教室を出ていってしまった。

俺たちの周りのクラスメイトが少しざわつき、今あったことをヒソヒソと話し合っている。

だが、

そんなことは

俺の耳には入っていなかった。


「なんだったんだろうな?東堂。今の…。でも、昼飯代が浮いたのはラッキー……んぐっ!」
ブラザーはそれ以上喋れなかった。
俺がブラザーの顔を手で鷲掴み、こいつを持ち上げたからだ。
「ぐわっ!と、東堂!?」
「イタドリクン……」
俺の口から出た言葉は、我ながら非常に冷静だったと思う。なにせ、平坦だ。一切の抑揚がない。
「とうどう!?」
「イタドリクン……チョット……ツラァカシテクレナイカナ…………?」



昼休みのトイレ。
俺はそこに、ブラザーを連れ込んだ。
ションベンをしてる奴らが2人ほど居たが、俺が片手でブラザーを運んでいる姿を見ると、一目散に姿を消した。

「痛い!痛いって!東堂!痛い!」
「やかましい!これぐらいで済むと思うなよ!これからたっぷり地獄を……」
「痛いっつってんだろうがー!」
ブラザーは俺の言葉を無視して、俺の右手を振りほどき、そのまま膝を俺の顎に入れた。

「ぐおっ!?」
「なんなんだ急に一体!?俺、なんかしたか!?」
とぼけたことを抜かしやがる。

「五月蝿い!お前は俺を裏切っただろうが!」
俺の言葉にブラザーは訝しげな顔をする。
「裏切ったぁ?なんもしてないだろ!俺がさっきしたことなんて、高田から弁当を……受け取った………………ぐらいで……………………」
喋りながら、ブラザーも合点がいったらしい。俺が何に猛っているのかを。

「いや、その……東堂?これはね?ちがうんですよ?」
「何が違うんだ?言ってみろ」
俺は腕を鳴らしながらブラザーに問う。
ブラザーはしぶといから、一撃で顔を突き抜くつもりで拳の構える。

「だー!おちつけって!!話す!全部話すから!!」




「なるほど、な。高田ちゃんの秘密特訓を、幸運にも覗いてしまったというわけか……」
この時点で俺はようやく、ブラザーが前日に何があったかを、正確に把握した。
「言い方は引っかかるけど、そのとおりだ」
ブラザーが首肯する。

「ふむ……ではその高田ちゃんが作ってくれた至高の弁当は、決してブラザーが高田ちゃんと付き合っている証ではないというわけだな?」
「ああ、そうだよ。よくわかんないけど、口止め料みたいなもんじゃねーの?あんまりおおっぴらにしたくないみたいだし」
「決して、高田ちゃんの好きな人がお前だった、ということでもないのだな?」
「無い無い。ありえないって」
「因みにブラザーは高田ちゃんを……」
「しつこい!天地に誓って、何もねーよ!!」

ブラザーの叫びに、俺はようやく安心した。

「ふ……それならそうと、早く言え」
「お前が喋る間もなく頭をつかんだんだろーが!」
「しかし安心したよ……ブラザーが高田ちゃんとくっつくなんてことがなくてな……」
「そんなことありえねーって」
「ああ、ありえないとは思ったが、本当に良かった……。わかってると思うがブラザー、もし貴様が高田ちゃんに告白されて付き合うなんてことがあれば……」
俺は男子便所の水道管を捻り潰す。
「俺はお前を殺すぞ」
ドドド…!と水道管が破裂して、水が勢いよく吹き出す。
ブラザーは冷や汗をかいて、コクコクと素早く首を振った。






――放課後。
ブラザーは高田ちゃんに言われたとおり、一人で昨日訪れた旧校舎の3階の教室に向かった。
教室に入ると、そこには既に高田ちゃんがいた。

「うぃーっす。来たぞー」
弁当箱を掲げるブラザー。
「お、遅かったじゃない!」
「いやー、すんません。HRが長引きまして……」
「まぁいいけど……ど、どうだった!?お弁当は!?」
高田ちゃんの問に、ブラザーはぎくりとする。

「あ、えーと……美味しかったよ!友達と分け合ったけど!うん!うまかった!!」
そうだな。俺と弁当を分け合ったのだ。分配は俺が9.7、ブラザーが0.3という、とても平等な分け方だ。
ブラザーの答えに、高田ちゃんはどこか残念そうに「そう……」と言いながら、弁当箱を受け取った。
ブラザーは慌てて、
「いや、マジでうまかった!できればまた食べたいくらいに!なーんちゃって!」
「…………」
ブラザーのやや上ずった声が、静かな教室に虚しく響く。

「あー……んじゃ、俺はこれで。東堂は便所の設備を壊して、先生に睨まれて居残りだし、明日は開校記念日で休みだから、俺も家に帰るわ」
「待って!」
踵を返したブラザーを、高田ちゃんが止める。

「な、なにかな……?」
ブラザーが『嫌な予感がする』と言わんばかりの表情で振り向く。
「えっと……その……あの……」
言いよどむ高田ちゃん。手を前で組みながら、少しモジモジしている(天使だ。天使がここにいる)

高田ちゃんはその後も、口を開いては閉じるを繰り返す。
ブラザーはこの後起きることへの予感で、顔がどんどんと青くなっていく。
そして、ついに高田ちゃんが口を開いた。
「………………好きです!私と付き合ってください!!」

この時、ブラザーの脳裏には、「あ、俺死んだ」の5文字が浮かんだと言う。





【呪術廻戦】東堂と虎杖の「存在しない記憶」捏造SS:第三章




――俺は虎杖悠二。中学1年生。
成績は良くはないけど悪くもない。ちょっとやんちゃな男の子。
親友は東堂葵。ちょっとどころじゃない、やんちゃな男の子。
今俺は、その親友に殺されるかどうかの瀬戸際なんだよね。

ことの始まりは俺が暇だったので、旧校舎に探検に行ったときのこと。
化け物が出るって噂だったんだけど、そこにいたのは高田ってゆー、結構好みの、タッパがあってケツのデカい女の子。
隣のクラスの女子で、親友の東堂の想い人なんだけど……東堂は前にフラレちゃったんだよな。
理由はどうやら、アイドルになるために練習したいから、男と付き合うなんて考えられないらしい。

そんなわけで、高田は東堂からすると高嶺の花。
まだ東堂は諦めてないみたいだけど、今すぐ高田に脈アリって感じじゃないみたいだ。
で、ひょんなことから高田と旧校舎で知り合った俺は、なりゆきで翌日、高田から弁当を貰うことになる。
それを見た東堂は、俺にきつ~い釘を差した。
『高田ちゃんと付き合ったら殺す』って。

まさか俺が高田と付き合うわけがないので、別に気に留めてなかったんだけど……まさかのその後、俺は高田に告白されてしまった。
早速叫んだよね。「なんで!?」って。
高田にも理由を聞きたかったし、そもそもなんで東堂から釘を差された次の瞬間にこうなるのってね。
……なんだろう。この「なんでの意味」って、後々の俺の人生にちょっと深く関わりがあるような……。
まぁいいや。とにかく、高田に、急な告白の理由を尋ねたわけよ。
そしたら高田は、こんな風に語った。

『…………初めてだったのよ。私の夢を笑わないで、肯定してくれた人。
あなたとなら……一緒に入られたら、今よりもっと勇気が出るって、そう思ったの。
だから……付き合ってください。
あ、勿論、返事はすぐじゃなくていいから!休み明け、明後日の放課後、またここで待ってるから……返事はその時に聞かせて!」

そう言って高田は、教室から出ていってしまった。
俺はと言うと、告白されて頭が真っ白になって、どこをどう帰ったのか覚えていない。

気づいたら俺はベッドの上にいて、日時は現在、翌日の木曜日の朝の6時。
うわ。すぐに家に帰ったとすると、丸々12時間ぐらい寝てたのか?
自分があの後何をしたのか、全く記憶がない……。

俺は立ち上がって、とりあえず冷蔵庫を開いて、ベーコンと食パンを取り出す。
テキトーに朝飯を食いながら、考えるのは昨日の告白のことだ。
どうしよう……東堂に殺される……。

いやまてまて。殺される云々の前に、まず高田にどう返事をするかを考えるべきだろう。
どう考えたってあの告白は、高田が決死の思いで俺に言ってくれたものだ。
それと真剣に向き合わないとか、失礼にもほどがある。

よし……一度、東堂のことは忘れよう。
単純に、隣のクラスのタイプの女の子に、ある日突然告白されたっていう、今のこの状況を、素直に受け入れてみよう。

…………………………やべー!超うれしー!!!
え、やばくね!?
あんな可愛い子に告白されちゃったよ俺!?
アイドル(志望)の女の子に「好きです!」って言われちゃったよ俺!!
ヤバい!すげえ!俺すげえ!!

………………って、普通の男ならなるんだろうか?
「正直なー……よくわかんねーだよな」
俺は独り言を言いながら、冷蔵庫のコーラを開けて飲み始める。

「なんてゆーか……女の子に告白されて嬉しいとか、付き合いたいとか、そういう感覚がようわからん」
東堂が「高田ちゃん!高田ちゃん!」と興奮してるのは、理解はできるけど、実感が無いんだよな。
いや、高田はかわいいと思うよ?見た目でいうと好みだよ?
ただ、じゃあ付き合うかっていうと……ねぇ?

「そもそも、付き合うって何?どんなことすんの?」
試しに、『付き合うとは』とスマホで検索してみる。

「え~と……なになに?
『付き合うとは、お互いが恋愛のパートナーとして約束し合うことです』……?
何言ってるか全然わかんないよ?

他には……
『付き合うとは、お互いの心の支えになること』……?
あー、そういえば、そんなようなことを高田は言ってた気がするけど……

後は……
『付き合うとは結婚をするための前段階』?
重っ!俺まだ中学生なんだけど?」

まいった……全然わからん。
「わからないなら、まずやってみればいい、とは思うんだけどなぁ。
『試しに付き合ってみる』とか、なんかよく聞くし……」
しかし、そんな軽い気持ちで行動したら、多分俺は翌日に死体で発見されるだろう。
犯人は東堂です。ヤスじゃありません。

「やばい……頭の中がぐちゃぐちゃしてきた」
付き合うって何するかわかんないし、
付き合ったら東堂に殺されるし、
そもそも付き合うとか東堂への裏切りな気がするし、
ってゆーか、こんなことばっか考えて、高田のことをちゃんと考えてない時点で失礼な気がするし……。

「いつもは東堂と馬鹿やってる時間なんだけどな……」
普段なら休日は2人でテキトーにぶらついたり、ゲーセン行ったりしてるけど、流石にこんな状態で、東堂を誘う気もしない。
逆に東堂からも今日は誘われてないし、高田の一件で、向こうも誘いづらいってことかもしれない。

「とりあえず、出かけっか」
モヤモヤした時は、家から出るに限る。
俺は残ったコーラを飲み干して立ち上がり、風呂にシャワーを浴びに行く。
爺ちゃんの見舞いにでもいっか。




「何だオマエ!こんな時間に何しとる!!学校はどうした!!」
爺ちゃんは病室に入った途端、俺にそんな憎まれ口をきいた。
「開校記念日で休みだよ。じゃなきゃ、わざわざ爺ちゃんのツラなんか見に来ないっつーの」
爺ちゃんは最近になって入院したばかりで、今すぐ生死がどうこうという感じでもないらしい。
「ふん!!開校記念日だぁ?だったらこんな老いぼれに会いに来てんじゃねーよ!彼女の一人ぐらい作って、そいつと遊んでろってーの!!」
爺ちゃんのあんまりにタイムリーな話題に、ガチャーン!と俺は、水を変えようとした花瓶を落としてしまった。

「お?なんだオマエ。何動揺してんだ?まさか…心当たりでもあんのか?」
クソ、勘が良すぎるだろ、このジジイ。
「イヤ、別ニ、ナンデモナイデスケド?」
とりあえずしらばっくれてみる。

「ははあ、その顔は……カワイコちゃんに言い寄られてはいるが、その子は親友の想い人で、友情と恋の板挟みでどうしたものか……と悩んでるってところか」
「読心術でも使えるのかアンタは!?」
勘が良いってレベルじゃねーぞ。
「なんだ。カマかけてみたら、ホントに当たりかよ。やるじゃねーか悠二!!」
爺ちゃんはベットから跳ね起きて俺にヘッドロックをかます。

「痛い!痛いって!爺ちゃん、随分元気だな!ホントに入院患者かよ!?」
「バッカやろう!俺がそう簡単にくたばるかよ!あと3年はピンピンしてらぁ!」
「何その微妙にリアルな数字!?」
やめてくれよ、縁起でもない。
「冗談は置いといて、だ。何があったんだよ?話してみ??」
「……実はさ………………」
俺は爺ちゃんに、簡単に今の事情を話した。


「ほほお……中学生にしては発育の素晴らしいボン・キュッ・ボンのお姉ちゃんに告白された……と」
「孫の青春をいかがわしい言葉で表現しないでくんない?」
ほんの一部分を強調しすぎだろ。

「悠二、そんなことはなぁ……悩むまでもないことだぜ」
爺ちゃんがニヤリと笑う。
う…なんかカッコいいぞこの人。伊達に人生経験、豊富じゃないな。
「悩むまでもないって……じゃあ、どうすりゃいいの、爺ちゃん」
「それはな……」
「それは?」

「そんなもんはなぁ、さっさと押し倒して既成事実を作っちまえばいーんだよ!!一度抱いちまえば、女なんて後はどーとでもならぁ!!」
「くたばれクソジジイー!!!」
俺は割れた花瓶を包んだ紙袋を爺ちゃんにぶん投げた。

「うぉぉぉぉ!?危ね!?何しやがるクソ孫!殺す気か!?」
「ああ、今死ね!3年後じゃなくて今死ね!!」
「だって、相手は大人の女だろ?だったらアダルトに対応するってのが筋だろうが!そもそも、据え膳食わぬは男の恥ぞ!!」
「俺も高田も中学生だっつーの!!ってか、そんなクソ対応を大人の対応っつったら、世の中の大人に刺されるぞ!!」
マジで中学生の孫に何教えてるんだ、このジジイ。

「チッ、じゃあ知らね。ガキの恋愛ごっこなんかに付き合ってられるかよ」
爺ちゃんはゴロリと寝っ転がって俺にシッシッと手を振った。マジで最悪だな、この人……。


結局この日は、このまま爺ちゃんと喧嘩別れして、その後に街をぶらついてみたけれど、どうして良いかわからないまま、家に帰って眠りについた。




――翌日。金曜日の朝。
俺は朝から憂鬱な気分で、通学路を歩いていた。
学校に登校してしまえば、多分授業なんてあっという間に過ぎてしまって、その後はもう、高田と約束した放課後だ。
なんて返事して良いのか、答えは未だに出ていない。

いや、爺ちゃんじゃないけどさ、普通なら告白されたら、とりあえず付き合っちゃえばいいと思うよ?
別に俺、高田のこと嫌いじゃないし、むしろ見た目は好みだしね?
『相手のことも知らないで、付き合うなんて失礼だ』なんて言う人もいるかも知れないけど、そもそも相手から告ってきて、俺が相手のこと知らないのは仕方なくね?
むしろ、とりあえず付き合って、それからお互いを知り合ってくのが普通だからね?

ただなぁ……そんな風に気軽にOKしたら、東堂が黙っちゃいないんだよなぁ。
だからといって高田に「ごめん!東堂が怖いから、お前とは付き合えない!」って……それスッゲーダサくね?
ってゆーか最低だろ。ごめんなさいするならするで、ちゃんとした理由を言うべきだ。

「……そもそも俺、なんでこんなに東堂にビビってんだ?」
ふと口に出た疑問だったけど、考えてみると妙だった。
なんで高田に返事するにあたって、ここまで俺は東堂を気にしなくちゃいけないんだ。
どうして俺はここまで、高田と付き合うことに抵抗を感じてるのだろう?


東堂が恐ろしいから?
→確かに、東堂は俺より強いよ。でもだからといって、東堂に脅されて、なんで俺が自分の行動を変えなきゃいけないんだ。俺は東堂の舎弟じゃない。
マジで敵対するなら、それはそれで、しゃーないってもんだろ。

高田のことが大好きな東堂に罪悪感があるから?
→いや、ちょっとはあるけど、告白してきたのは高田だぞ?なんで東堂のお気持ちをそこまで大事にしてやらなきゃいけないんだ?
俺と高田の話に、究極アイツは、一切関係ないだろ。

高田と東堂にくっついてほしいから?
→いや、別にどうでもいいです。

う~ん……わからん。
どうしてここまで抵抗を感じてるんだ?
考えてみるとさ

1,高田は可愛い。俺も好み。
2,客観的に見ても高田は、夢に向かって頑張ってるなど、努力家ですごく魅力的な内面をもっている。
3,そんな子が俺に告白してきた。

オッケーしろよ!俺!
爺ちゃんも『据え膳食わぬは男の恥』って言ってたぞ!?(意味よくわかんないけど!)

なんだか自分の気持ちが益々よくわからなくなってきたところで、学校に到着してしまった。
うう……早い。時間がすぎるのが早い。
俺はノロノロと自分の上履きがある下駄箱に向かう。
するとそこには、高田が上靴を履いて立っていた。

俺のクラスと高田のクラスは隣同士なので、当然下駄箱も近い。
偶然、高田もいま来たのだろうか。
それとも、俺を待っていたのだろうか。
……後者に決まってるよな。

「……おはよう」
「お、おうっ!おはよう!」
高田の挨拶に、俺はどもりながら返す。
「えっと……返事、放課後にあそこで待ってるから。それだけ」
高田は本当にそれだけ言って、ダッシュで教室に向かっていってしまった。
ヤバい……可愛い。
えー、あんな可愛い子と付き合えるんでしょー?OKしない理由はないって!
東堂に殺されようと、俺と高田の自由意志をアイツに止められる道理はないって!!

……でも、なんか引っかかるんだよなぁ。
なんで俺は、即答できないんだろう…………。


「いい朝だな、ブラザー」
ボーッと俺が立ちすくんで考えていると、後ろから声がかかる。
言うまでもなく、東堂だ。
「よう、東堂。そんないい朝でもないだろ。曇ってるし」
とりあえず反射的に、軽口で返す。
「いいや、いい朝だよ。死ぬにはいい朝だ」
東堂はそういって”ドコォ”と拳で、俺の目の前の下駄箱を拳でぶっ壊す。
学校の備品をいくら破壊すれば気が済むんだ、お前は。

「なんのことかな?」
「とぼけるなよ、ブラザー。さっき高田ちゃんと、何を話していた?」
「いや別に……何も。ただの朝の挨拶だけど?」
本当の事を言うとめんどくさいから言わない。
別にビビってるわけじゃないんだからね!

「そうか……高田ちゃんは俺にはおはようを言ってくれないのに、ブラザーには言ってくれるのか……」
天を仰ぐ東堂。
「な、なんだよ。それぐらいで俺を殺す、とか言う気かよ」
「まさか……ただ…………羨ましい!俺は猛烈にブラザーが羨ましい!!」
東堂は下駄箱にヘッドバットをかます。
あ~あ、さっきはドアが一個壊れた程度だけど、今度は本格的に下駄箱全体が歪み始めたぞ。

「お前……よくそんなに自分の欲望に忠実になれるよなぁ」
俺はため息を吐きながらそう言った。
すると、東堂はピタリと動きを止めた。

「何を言ってるんだ、ブラザー。
俺たちは何のために生きていると思っている?
己が魂の欲求を満たすためだ。
自らの望みを押さえつけるなど、生への冒涜にほかならんぞ」
大真面目な顔をして、東堂は言った。
東堂からすると、何気ない言葉……だったんだと思う。
しかし、その言葉は、俺の心に強く響いた。

そっか……自分の魂の声、か……。

「東堂」
「うん?」
「サンキューな。助かった」
「?」

訝しむ東堂を無視して、俺は教室に走り出した。
朝礼も近いし、放課後までに、俺の今の気持ちを高田にどう伝えたらいいのかを考えなくてはいけない。






【呪術廻戦】東堂と虎杖の「存在しない記憶」捏造SS:第四章



そして、放課後。
俺は高田の待つ、旧校舎3階の教室へと足を踏み入れた。
相変わらず高田は俺より先に、教室で待っていた。

「……今日は早いのね」
「HRが終わって、めっちゃ走ったからね。……ってゆーか、なんでそんな俺より早いわけ?」
「HR出てないから」
さらりと高田はサボり宣言。なんかさー、俺の周りのやつってさー、モラルがなってなくない?
「あっそ」

「そ、それより……返事は?返事を、聞かせて、くれない…?」
高田は緊張した表情で問いかけてくる。
俺も緊張しながら、ゆっくり口を開く。

「ああ、えっと……その……なんだろ。
結論から言うとさ……
ごめん!俺、高田とは付き合えない!」
俺は勢いよく、頭を下げた。
チラリと高田の顔を見上げると、意外にも高田はあまり動揺しておらず、涼しい顔をしていた。
「……そう。理由、聞いてもいいかしら?」
高田の問に、俺は頷く。

「……まず、告白してくれたのはすげー嬉しいよ。
めちゃくちゃ緊張したと思うし、本当に尊敬する。
このまま付き合っちゃえ!って、一瞬思ったよ。

でも、考えたんだ。俺が今、一番したいこと。
俺さ、今一番やりたいことって、東堂とバカやることなんだよね。
東堂と頭悪いこと話してさ、毎日遊んで……それがマジで今、楽しいんだ。

考えてみたら俺、高田のことなんにもしらないし、そもそも、付き合うっていうこともよくわかんないし……。
そんな状態で付き合うのも、おかしいのかなって。
高田みたいな可愛い女の子に告白されて、凄い舞い上がっちゃったんだけど……俺が今したいことって、東堂と一緒にいることなんだ。
だから……ごめん!」
俺はもう一度、頭を勢いよく下げた。
それに対し高田は……
「プッ……アハハ……アーッハッハッハッハ!」
ものすごく楽しそうに笑い出した。

「あ~おかし!笑った笑った!」
高田は笑いすぎて流れた涙を指で拭う。
「高田……?」
首をかしげる俺。

「馬鹿ねぇ……あんた、真面目に答えすぎよ!」
「……どゆこと?」
「気づかなかった?私の告白、演技だったんだよ?」
「………………え~!?」
演技?演技って言った?この人。

口をあんぐりと開ける俺に、高田は続ける。
「実はさ、私、今度受けるアイドルのオーディションで、『一目惚れした男の子に告白する演技』があって、それであんたに、その演技を仕掛けたってわけ!」
「な、なんでそんなことすんの……?」
「相手の反応を見て、よりリアリティのある演技をするため」
サラリと高田は言い放つ。何この演技ガチ勢。こわい。

「だからぁ、そんな苦しい顔しなくていいんだよ?むしろごめんね!なんか、悩ませちゃったみたいで!」
そう言って高田は笑う。
う……そんなに顔に出てただろうか?
確かに、どうやれば俺の気持ちを一番伝えられるだろうかと、かなり悩んでしまったけれども。

ペタペタと自分の顔を触る俺を尻目に、高田は教室の窓際に歩いていき、外を眺めだした。
俺からは表情が見えなくなる。
「でも、自信なくしちゃうな~。私の告白の演技なら、男は絶対落とせる!って思ってたんだけど……」
「あー、それなら、自信もっていいと思う!」
俺の即答に、高田はジト目でこっちを睨む。

「私の告白を拒否ったあんたに言われても、説得力皆無なんですけど……?」
「いや、だって、告白された時、すごいドキッとしたもん!殆どの男は一発で落ちるって!俺だって、東堂いなかったら、絶対付き合ってたし!!」
「……ッ!」
高田は何かが気に障ったのか、俺から目をそらし、また外を見てしまった。
う~ん……なんか褒めすぎて逆に嫌味っぽく聞こえてしまっただろうか?本心なんだけど。

高田は顔を背けたまま、口を開く。
「と、とにかく……アンタが告白を断ることに、謝る必要は皆無だから!むしろ、私の演技の練習に付き合わせちゃって、こっちが謝罪しなきゃいけないくらいだし!」
「あー、それは気にしなくていいよ。俺も全然、気にしてねぇから」
「……いいやつね、あんた」
「そう?あんまり言われたこと無いけどな」
俺はニカっと笑った。

「……じゃあ、私はまたオーディションの練習があるから、悪いけど、一人にしてもらえる?」
「いいけど、なんか手伝おうか?演技の練習なら、相手役ぐらいやるけど?」
「……大丈夫。ありがと。でも、今日は、自分一人でやりたいの」
「オッケー。じゃあな、高田。オーディション、頑張れよ!」
高田の邪魔をしてはいけないと、俺は素早く教室を出て、引き戸を勢いよく閉めた。
だから、高田の最後の言葉は、俺には聞こえなかった。

「……これでいいんだよね。だって、アイドルって、恋愛禁止だもん」







旧校舎を出ると、なぜかそこには、仁王立ちした東堂が居た。
「うお、東堂じゃん。どったの?」
「ブラザー……この旧校舎で、高田ちゃんと何をしていた?」
なんで高田がいるって知ってるんだよ、こいつ。
「聞くまでもない……ブラザーがいないから校舎を探していたら、旧校舎の3階、入り口近くの階段からすぐの教室の窓目に佇む、高田ちゃんが目に入ったのだ」
目ぇ、よすぎだろ!ってか、俺のモノローグに返事すんな。

……さて、どうしたものか。
全部終わったことだし、話しても問題ないと思うけど……、話したら殺されるまではいかなくても、半殺しぐらいは覚悟しなきゃダメそう。
でも、それもまた、面白いかな。

「なぁ、東堂」
「なんだ、ブラザー」
眼光が怖い。
「ここ3日であったこと、これから全部、お前に話すよ」
「ほぉ……やはり何か隠していたというわけか。いいだろう、聞いてやろう」
「でさ……」
「うん?」

「その話聞いたら、多分俺はお前に半殺しにされるだろうけど、気にせず好きに殴れよ」
この言葉には、東堂も面食らったようで、ぱちくりと瞬きしている。
「それは……内容にもよるが……」
「でさ、気が済んだら、多分その頃には立てない俺を、ラーメン屋に連れて行ってくれ。ラーメンおごってやるよ」
「…………ブラザー、よっぽどやましいことがあるようだな?」

ねぇよ、そんなもん。
でも、正直に話したら、東堂は絶対怒るだろう。
俺からすると不可抗力とは言え、罪悪感が無いと言えば嘘になる。
こりゃースパッと話して、スパッとけじめつけて仲直りってのが、筋だろう。
こういう形の友情があってもいいんじゃないかと、俺は思った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「――そうしてブラザーは、俺にすべてを明かして、俺に謝罪した後、ラーメンを奢ってくれたんだったな」
時は戻って現代。
ここはラーメン屋。
東堂の語りが長かったせいで、二人のラーメンはすっかり伸びてしまっていた。

「思い出したか?ブラザー」
「何一つ知りませんけど!?」
東堂の問いかけに、悠二は思いっきり反論した。

「色々言いたいことはあるけどさ!とりあえず俺とお前は同じ中学じゃないし、高田ちゃんなんて会ったこともないからね!?」
「わかるぞブラザー……今となっては、あの青春の日々は、まるで夢幻の如しということだな…」
「『如し』じゃなくて、そのまんま夢幻だから!ってゆーか、なんで途中からモノローグがお前から俺に変わってんの!?俺のキャラクターを捏造しないでくれますか!?」
「照れるな照れるな、ブラザー。俺への熱い思い……あの日、確かに受け取ったぞ」
「あの日ってどの日だ!!??」
悠二は悶えながら、どうやって反論してやろうかと考える。

すると突如、ガラリとラーメン屋の引き戸があき、大きなカメラや、棒付きの集音マイクを担いだ男たちが入ってきた。
服装から言っても、TV局のスタッフだとわかる。
「なんだ……?」
悠二が入口の方を見ていると、さらに長身の女性が入ってきた。
それは、悠二が東堂に何度も写真で見せられた顔……アイドルの高田であった。

「た、高田ちゃん!?」
東堂がショックを受けていると、高田がカメラに向かって、笑顔を作る。
スタッフが「3,2,1……」とカウントダウンを始める。
そして、高田はカメラに向かって、大きな声で喋り始めた。
「はいどうもこんにちは!『隠れたラーメンの名店に行こう!』のコーナーです!!担当は私、高田です!」

「おい東堂!知ってたのかこれ!?」
悠二が小声で、隣りにいる東堂に尋ねる。
「いや、知らん!おそらく、他のタレントの代役(ピンチヒッター)だろう!俺が高田ちゃんの出るコーナーを知らんはずがないから、昨日今日に、突然抜擢されたに違いない!」
東堂も小声で返す。

「なお、いつもこのコーナーをお送りしている結城ちゃんは体調不良のため、急遽、私高田がお届けします!よろしくおねがいしまーす!」
高田の言葉に、東堂は「ほら、見たことか」と悠二に言う。

高田はそのままつつがなく番組を進め、店主にインタビューしたり、ラーメンを作っているところをカメラで届けていく。
「……はい、それでは次に、来店されているお客さんにも、話を聞いてみましょう!……あら?」
高田がインタビューのために客席に近づくと、そこで東堂と目が合う。
「あれ……君は……」
「と、東堂です!いつも握手会でお世話になっております!!」
東堂が勢いよく立って敬礼する。
悠二は何だコイツ……といった目で東堂を見ていた。

「キャ~♪東堂くんだぁ!すごい偶然だね!カメラの前の皆さん、彼は私の握手会によく来てくれる男の子なんです!東堂くん!ここのラーメンは美味しい?」
「最高です!!」
「こんだけ食ってりゃ、説得力はあるな……」
舞い上がってる東堂を尻目に、悠二は冷めた目で重なった丼ぶりを見ていた。

悠二のつぶやきが聞こえたのか、高田が東堂の影に隠れていた悠二を覗き込む。
「東堂くん、こちらは?お友達?」
「はい!俺の大親友!虎杖悠二です!!」
「TVの前でフルネーム叫ばないでくんない!?」
悠二のツッコミに、高田がクスクスと笑う。

「かわい~!悠二くん!よろしくね!!」
高田が悠二をハグする。
その瞬間、東堂がカメラに映らず高田にも気づかれない角度で、凄まじい殺気を込めた視線を悠二にぶつけた。

「あ……俺死んだ」
悠二は自らの死期を悟り、天を仰ぐ。

時は2018年10月21日。
渋谷事変の起こる、10日前の出来事であった。


終わり







あとがき


漫画を始めとする創作物というのは、大体において作者の『思い込み』の産物だと思います。
作者の知識、経験、価値観、その他あらゆるものにおける『思い込み』が、面白い創作物を作る鍵の一つであることは、間違いないでしょう。

そんな『思い込み』の産物が創作物だとするならば、当然、生まれるキャラクターも『思い込み』が激しいわけですが、その中でも呪術廻戦のキャラクターは特に、思い込みが強いように思えます。
そして、その思い込みが強いキャラ達の中でも、ひときわ目立って思い込みが強いのが、東堂葵というキャラクターです。
彼は高い技能と優れた肉体、卓越した頭脳を持ちながら、それ以上に強すぎる思い込みによって、より強く、そしてより愚かな立ち振舞をしています。
そんな東堂葵が僕は大好きで、今回は彼の『思い込み』を最大限に爆発させたらどこまでいってしまうのか?そんな思いから、この二次小説を書いてみました。

というわけで、『東堂葵の存在しない記憶をでっちあげてみた』、いかがでしたでしょうか。
少しでも面白いと思っていただければ幸いです。


You Tubeで前編の動画化もしましたので、
よろしければ見ていただけると嬉しいです。



ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

ロイド




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